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神戸地方裁判所 昭和50年(ワ)614号 判決

原告 株式会社サンシャット(旧商号株式会社キョーリン、株式会社ビデオ・カセットジャパン)

右代表者代表取締役 松岡勇

原告 林守八

右原告両名訴訟代理人弁護士 中嶋一麿

右原告会社訴訟復代理人兼原告林訴訟代理人弁護士 下田幸一

被告 兵庫県

右代表者知事 坂井時忠

右訴訟代理人弁護士 大白勝

右訴訟復代理人弁護士 井上史郎

同 後藤由二

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一申立

一  原告株式会社サンシャット(以下、原告会社という。)

1  被告は原告会社に対し、金七三〇万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  原告林守八(以下、原告林という。)

1  被告は原告林に対し、金七〇万五、八〇〇円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

三  被告

主文同旨

第二主張

一  原告らの請求原因

1(一)  原告会社は別紙手形目録(1)及び(2)記載の、原告林は同目録(3)記載の各約束手形の所持人であったところ、昭和四八年四月二三日、当時、原告会社の代表取締役であった原告林は、東海道新幹線に乗車して座席で仮眠中、右(1)ないし(3)手形(以下、本件各手形という。)を含む手形六通在中の札入れを盗まれた。

(二) 本件各手形の受取人欄は、(2)手形のみが「昭和物産株式会社」と記載されており、他の(1)及び(3)手形はいずれも白地であったが、右盗難後、本件各手形は「月岡ゆきお」と称する素性不明の者から、訴外長田寿夫の仲介で訴外株式会社三幸商事(代表取締役高春敏)に手渡され、三幸商事から同目録記載のとおり、訴外株式会社神戸商事(代表取締役山本政照)に白地裏書譲渡され、更に神戸商事から、(1)手形は訴外津村清に、(2)手形は訴外株式会社ライト外業(代表取締役中島祐二)に、(3)手形は訴外今川明人に、それぞれ白地裏書譲渡され、(3)手形については不渡りのため神戸商事に受戻された。

(三) しかし、右三幸商事以下の各譲受人らは、いずれも裏書の連続した本件各手形を取得しているが、その取得時において、各手形が盗難手形であることを十分知悉していたか、または容易にこれを知り得たにもかかわらず重大な過失で知らなかったいわゆる悪意の取得者であって、本件盗難後、後記のように差押を受けまたは任意提出した最終所持人に至るまで、本件各手形を善意取得した者はいなかったから、原告らが本件各手形上の正当な権利者であった。

2(一)  原告林は、本件盗難後、直ちにこれを名古屋鉄道公安室に届出ていたところ、右盗難手形六通の一部が神戸市内で発見されたため、兵庫県生田警察署は、右鉄道公安室から事件の引継を受けてその捜査を開始し、同署係官は同年八月一八日、(1)手形を津村から取立委任されていた神戸銀行(現在の太陽神戸銀行)本店で差押え、次で同月二二日、(2)手形をライト外業の代理人弁護士野村光治から、(3)手形を神戸商事の代理人弁護士古本英二から、各任意提出を受けてこれらを領置した。

(二) その後、右捜査を担当した小川友男巡査部長らは、同月二二日に(1)手形を津村に還付し、同年九月一九日に(2)手形を野村弁護士に、同年一一月一六日に(3)手形を古本弁護士にそれぞれ仮還付した。

3  しかしながら、右還付・仮還付は違法な処分であり、生田警察署の本件担当捜査官らには、次のような過失がある。

(一) 小川巡査部長らは、名古屋鉄道公安室から送付を受けた一件捜査資料の他、前記高、山本、津村、中島及び長田ら(以下、高らという。)を取調べたが、その捜査結果からすれば、本件各手形が賍物で、右高らはいずれも悪意の取得者として手形上の権利を行使できず(賍物罪に問擬すべきである。)、原告らが正当な権利者であることは当然判明した筈であるから、刑訴法二二二条、一二四条により、本件各手形を被害者である原告らに還付すべき理由が明らかであるにもかかわらず、漫然と前記2の(二)の無権利者に還付ないし仮還付した点に過失がある。

(二) 仮に、右還付・仮還付時点における捜査段階では、未だ高らの悪意の点に疑義があったとしても、捜査官としては、本件各手形の利害関係人の権利を害さないよう慎重に捜査を遂げ、その還付先を決定すべきであるから、本件担当捜査官らは更に捜査を尽くし、その捜査終了時まで重要証拠物である右各手形を引続き留置すべきであり、しかも、原告らは、既に盗難直後に除権判決を求めるため公示催告の申立をし、その手続中であったから、なお更、右手続が終るまで留置しておくべき義務があったのに、あえてこれを還付した点にも責任がある。

4  以上の如き違法な還付ないし仮還付処分により、原告らは本件各手形の所持を回復することが著しく困難となり、手形上の権利行使が事実上不可能になり、原告会社は(1)及び(2)手形の、原告林は(3)手形の、各額面額相当の損害を被った。右損害は、兵庫県生田警察署の前記担当捜査官らの公権力の行使により生じたものであるから、被告県は国家賠償法に基づきこれを賠償すべき義務がある。

5  よって、被告に対し、原告会社は金七三〇万円((1)、(2)の手形金)、原告林は金七〇万五、八〇〇円((3)の手形金)と右各金員に対する各訴状送達の翌日から完済までいずれも民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  被告の認否及び反論

1  請求原因1(一)の事実は知らないが、同1(二)及び2の各事実は認める、同1(三)の事実のうち、本件各手形の譲受人らがその取得時に、裏書が連続していたことは認めるが、その余の点及び同3、4の各事実はいずれも否認する。

2  本件捜査において、本件各手形が賍物(盗難手形)であることを基礎付ける資料は、原告会社代表者(原告林)の被害申告のみで、他にこれを裏付ける証拠が収集できず、しかも、手形面上にも原告らの名は全く記載されていなかったので、これを原告らに還付すべき理由は見出せなかった。仮に、本件各手形が賍物であり、原告らが被害者であったとしても、右各手形の取得者(被押収者ないし差出人)らは、いずれも裏書の連続した手形の所持人で、その悪意を認めるに足る証拠は何ら存在しなかったのであるから、生田署の担当捜査官がした本件還付・仮還付処分は、適法であって、何ら違法性はない。また、捜査機関が証拠物を捜査終了まで留置すべき義務はなく(刑訴法一二三条一項)、本件各手形については、捜査官においてコピーをとった上、これを還付したのであって、捜査上は勿論、公訴維持上も支障は存せず、本件領置物が手形という高度の流通性を有する有価証券であること、裏書の連続した所持人は正当な権利者と推定されること(手形法七七条一項一号、一六条一項)、呈示期間があることなどを考えるならば、徒らに領置を継続することは許されるべきでない。更に、原告らは、公示催告及び除権判決手続終了まで本件各手形を領置すべきである、と主張するが、捜査機関が右手続終了まで領置を継続すべき法令上の根拠のないことは勿論、公示催告は公示の方法で未知不分明の利害関係人に失権の警告を付して権利の届出を催告するものであり、その届出がないときに除権判決をする手続であるから、公示催告自体は手形所持人の実体的権利関係を何ら左右するものでなく、いわんや、その申立人が手形喪失時に所持人であったことを確定するものでもない。従って、この点も主張自体理由がないというべきである。

三  被告の抗弁

原告林は、原告会社の代表取締役として、昭和四九年一一月一二日に本件(1)及び(2)手形につき損害賠償の本件訴(原告会社の訴)を提起しているので、少くとも、その頃には、既に自己が所持していたと称する本件(3)手形についての損害及び加害者も知っていた筈であるから、同日から三年の経過により、原告林の損害賠償請求権は時効で消滅した。

四  抗弁に対する原告林の認否

抗弁事実は争う。

第三証拠《省略》

理由

一  原告ら主張の請求原因中、2の(一)の事実(兵庫県生田警察署の担当捜査官が本件各手形を押収ないし任意領置した事実)及び2の(二)の事実(その後、右捜査官がこれを還付ないし仮還付した事実)は、いずれも当事者間に争いがない。

二  そこで、原告らの本件各手形上の権利の有無について検討する。

1  《証拠省略》によると、原告会社は(1)及び(2)手形を昭和四八年四月二二日頃訴外昭和物産株式会社から、原告林は(3)手形を同年三月末頃訴外相崎一男から、いずれも手形割引(融資)により取得してこれを所持していたところ、当時原告会社の代表取締役であった原告林が同年四月二三日、商用の帰途、東海道新幹線大阪―名古屋間の上りひかり六八号に乗車して座席の帽子掛に上衣を掛けて仮眠中に、その左内ポケットに入れていた本件各手形を含む六通の手形が札入れとともに盗難にあったことが認められ、他にこれを覆すに足りる格別の反証はない。

そうすると、右盗難後、本件各手形を善意取得した者が現われない限り、原告らは本件領置物(本件各手形)の還付を受くべき被害者、すなわち正当な手形上の権利者であるといわなければならない。

2  本件手形が右盗難の時点で、受取人欄は(2)手形のみが「昭和物産株式会社」と記載されており、他の(1)及び(3)手形はいずれも白地であったこと、その後、手形上は別紙目録記載のとおり、三幸商事から神戸商事に白地裏書されて、右神戸商事がいずれも裏書の連続した本件各手形を所持していたことは、当事者間に争いがないところである。

3  そこで、右神戸商事が本件各手形を取得するにつき、いわゆる悪意の取得者であったか否かの点について、まず判断するに、《証拠省略》を総合すれば、神戸商事は、昭和四〇年頃から洗濯機等の販売を業とするかたわら手形取引も行っており、本件当時頃は従業員一五名位を擁する商事会社であったこと、右商事の代表取締役である山本政照は、かねて手形割引等の取引があったライト外業の代表取締役中島祐二の紹介で、昭和四七年八月頃、三幸商事(宝石卸販売業)の代表取締役高春敏と知合ったが、その際、中島から、高は二〇年来の親交ある友人で信頼のできる人物である、と聞かされていたこと、一方、原告らは、本件盗難直後に名古屋鉄道公安室に被害届を提出したほか、その三日後の昭和四八年四月二六日には、日刊新聞紙上に本件各手形の盗難無効公告を掲載したが、当時山本は、右新聞公告には全く気がついていなかったこと、その後同年五月一一日頃、山本は高から本件各手形の交換を頼まれたので、取引先の寿味機械株式会社などに、三幸商事ないしその代表者高の信用調査を依頼したところ、信用できる旨の回答を得たこと、そこで、山本は同月一八日頃、ライト外業の事務所において、高から本件各手形を白地裏書により譲り受けて、その代わりに神戸商事振出の約束手形九通額面合計金八〇〇万五八〇〇円(本件各手形の額面合計金額と同額の手形)を高に手渡したこと、その後同月二五日頃、山本(神戸商事)は本件(1)及び(2)手形を前記寿味機械に商品代金支払のため交付したところ、盗難品と判明して返還されたので、神戸商事振出の約束手形と取替えたこと、(3)手形は、その頃、今川明人を経て川口商事に手形割引に廻していたが、これも盗難手形と判明し神戸商事に返還されたこと、その後山本は同年六月一日に生田警察署で任意取調べを受けたが、その際は本件(1)及び(2)手形について供述し、次で翌月三日の第二回取調べで(3)手形につき供述していること、この間に神戸商事は事実上倒産(同年六月二〇日頃)したが、その頃、山本は神戸商事の代理人である古本弁護士から、盗難手形でも善意取得すれば有効である旨の説明を受けていたので、生田署から任意提出を求められていながら、負債整理のためやむなく、本件(1)手形を七月二一日頃津村清に、(2)手形を六月末頃中島にいずれも盗難手形であることを十分説明した上、各譲渡し、(3)手形は古本弁護士に預けたこと、そして、盗難手形と判明した後、山本は高に対し、再三その責任を厳しく追求し、既に交換していた神戸商事振出の手形の返還を強く求めていたが、間もなく高が所在不明となり、結局、右手形は回収されるに至らなかったこと、なお、本件(1)の手形については、最終所持人の津村から振出人の日恵装飾に対する手形金請求の訴(当裁判所昭和五一年(ワ)第一一二八号)が提起され、審理の結果、「津村の前者である神戸商事(山本)に悪意ないし重過失は認め難い。」との認定、判断(理由)により、津村勝訴の判決が既に確定してることが認められ(る。)《証拠判断省略》

以上認定の事実関係からすると、神戸商事の山本が、本件各手形を三幸商事の高から手形交換により取得した際、盗難手形であることを知ってこれを譲り受けたいわゆる悪意の取得者であると断定することは到底困難であり、むしろ、神戸商事はこのような事情を知らずに本件各手形を善意取得したものとみるのが相当であり、また、原告ら主張の重過失の点についても、前記認定のように、山本は高と以前から面識があり、しかも、同人の信用、人柄等については、紹介者の中島からこれを保証されていたこと、そして、本件各手形を取得するに当っては、その信用性につき一応調査確認していること、手形面上も不審な記載はなく、その上、振出人はいずれも著名な有力会社であること等本件に顕われた諸般の事情を勘案すれば、たとえ、神戸商事(山本)が本件各手形に関する盗難無効の新聞公告を見落したりして、然るべき相当の注意を尽くさなかったとしても、社会通念上、手形取引における注意義務を著しく怠った重過失があるともいい難く、原告らの右主張も採用できない。

そうすると、本件各手形は、少くとも、神戸商事において、これを善意取得したものとみるべきであり、従って、その余の利害関係人ら(三幸商事ら)の悪意の点について判断するまでもなく、原告らは、もはや本件各手形上の権利を行使することができなくなったものといわなければならない。

三  そこで生田警察署の担当捜査官がした本件各手形の還付・仮還付処分(以下、本件還付処分という。)の当否について検討する。

1  《証拠省略》を総合すれば、生田警察署は昭和四八年五月三〇日、名古屋鉄道公安室から本件盗難事件の引継を受けるに当たり、原告林の被害届、供述調書等一件資料を受理した上、これらの資料に基づき、同署の担当捜査官らは、山本(三回)高、長田、津村、中島、古本らの参考人から事情聴取をしたこと、これに対し、長田は「四年程前から手形割引をしてやっていた知り合いの月岡某を高に紹介した。」旨供述し、三幸商事の高は「本件各手形を含む手形五通は、長田の紹介で月岡某から宝石類を売却した代金として受領したが、盗難手形とは知らなかった。」旨弁解し、神戸商事の山本も前記二の3で認定した事実に沿うような内容の供述をしていること、そこで、担当捜査官らは、長田の供述をもとに月岡某の所在を捜査したが判明せず、右高らの弁明の裏付が確認できなかったため、再度、高や長田らに出頭を求めたがいずれもこれに応じず、そのうち同人らも所在不明となり、結局、三幸商事(高)より以前の本件各手形の流通過程の解明及びその窃盗犯人の割出しが事実上困難(不能)になったこと、そこで、同署の刑事第一課長奥平畩美は、本件各手形の盗難を裏付ける資料が原告らの被害申告だけに限られ、手形面上にも原告らの記載がなく、他方、差出人らはいずれも裏書の連続ある手形の所持人であり、その支払期日も到来していることなどの事情を考慮し、もはや捜査の進展も期待し難い状況下では、これ以上いたずらに本件各手形の留置を続ける必要はないものと判断して、その写をとった上、これを差出人らに還付ないし仮還付したこと、そして、間もなく、本件盗難事件は一件記録とともに名古屋鉄道公安室に返送されたことが認められ、これに反する格別の証拠はない。

2  ところで、刑訴法上、押収物の還付は、特段の事由がない限り被押収者(差出人)に還付すべきものと解され(同法一二二条一項、二二二条で捜査機関に準用、以下同じ。)また、仮還付についても、原則として、押収物の所有者、所持者、保管者又は差出人に仮還付されるのであり(同法一二三条二項)、原告ら主張の被害者還付は、押収物が賍物であり、かつ被害者に還付すべき理由が明らかな場合に限定されているものである(同法一二四条一項)。そして、被害者に還付すべき理由が明らかな場合とは、私法上被害者が、当該押収物の引渡を請求する権利のあることが明白な場合をいい、捜査機関の行う還付においても、右引渡請求権の有無につき、事実上又は法律上の疑義があるときは、被害者還付をすべきでないと解するのが相当である。

3  そこで、前記認定の事実関係をみると、本件捜査段階においては、原告らの被害申告を除いて、本件各手形が盗難にかかる賍物であることを裏付ける証拠は皆無であって、右被害申告のみをもって、原告らに引渡請求権があることが明白とはいい難く、担当捜査官らが、少くとも、窃盗犯人を割出し、右被害申告に合致するような、窃盗事実についての客観的な嫌疑が認められるに至るまで、被害者還付の手続をとらなかったことは、相当な措置というべきである。のみならず、盗難後本件各手形を取得した三幸商事(高)や神戸商事(山本)らの終始供述する善意取得の弁解をたやすく排斥できる的確な捜査資料も得られなかったのであるから、この点からも、原告らに引渡請求権のあることが明らかであったとは到底いえず、若し、このような場合に、差出人還付の原則によらず被害者還付をすれば、捜査機関の介入により、いたずらに手形上の権利行使に無用な混乱と紛争をまねく結果になりかねないといわざるをえない。

4  また、刑訴法上、留意の必要のないものは、事件の終結を待たないで還付しなければならないとされているところ(同法一二三条一項)、本件還付処分の時期についても、既に認定した捜査経緯から明らかなように、本件捜査の進展がもはや客観的にこれ以上期待できなくなった段階で還付したものであり、しかも、窃盗や賍物罪の立証方法としては、手形の写でも足りること、更に、本件各手形の支払期日との関係でも、これ以上留置を続けると、差出人らに実体上の不利益を与える虞れがあったこと等の事情を勘案すれば、生田警察署の担当捜査官らが、前示の時点で、本件各手形の留置を継続する必要がないものと判断して、事件の最終的決着を待たずにこれを差出人らに還付ないし仮還付した処置は時期的にも相当であり、それがたとえ原告ら主張の公示催告手続中であっても(もっとも、右申立が何時なされたかについては、証拠上明らかでない。)、その手続終了まで留置すべき理由(法的根拠)はなく、まして、盗難後に本件各手形を善意取得したとみられる者(差出人)が既に現われている本件のような場合には、むしろ、出来得る限り早期に還付して然るべきものといわなければならない。

以上の次第であって、本件各手形につき、生田警察署の捜査官らがした本件還付処分には、その被還付者の選定ないし還付時期等いずれからみても、これを違法、不当とすべき点はない。

四  よって、原告らの本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく、いずれも理由がないからこれを棄却し、民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 永岡正毅 裁判官 渡部雄策 村瀬均)

〈以下省略〉

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